La Vento 460

N-ro 460    2024年 7月号
La VentoSuita Esperanto-societo

吹田エスペラント会会報  発行:矢吹あさゑ 吹田市南金田2-4-4
郵便振替 00970-0-319578   年会費 6000円  準会員は 2400円
ホームページ http://suita.chu.jp

★ 第72回関西エスペラント大会終わる!
6月29日(土)~30日(日)に、京都市国際交流会館で第72回関西エスペラント大会が開催された。参加者228名(不在参加57名、欠席15名含む)。吹田エス会からは、佐藤、松田、大畑、松川、矢吹の5名が参加。大畑は図書販売を、松田は大会ヘルパントとエミーニョさんの宿泊を、私は公開プログラムの司会を担った。皆さん、お疲れさまでした。
私が参加したもののみを報告する。
一日目の大会前遠足は会場の隣にある無鄰菴だった。明治29年に造営された山縣有朋の別荘で、千坪ある。庭園と母屋・洋館・茶室の三つの建物があり、庭園は有朋の指示に基づいて、七代目小川治兵衛によりつくられた。借景の東山から庭までが連続しているように見せていた。有朋が故郷を懐かしんで植えた草ボケが何本もあり、青い実をたくさんつけていた。芝生の庭も美しい苔の庭も同じ空間にあって調和しているのが不思議だった。琵琶湖疎水から水を引いて、庭の中をせせらぎが流れるようにしてあった。洋館では苔の展示と有朋が使用していた書見台付きのアームチェアや豪華な応接セットを見学した。庭園カフェで抹茶とアイス饅頭のセットを注文し、一息ついた。私たちは20名ほどだったが、ほかの見学者も次々来ていたので意外と人気があるのだと驚いた。雨上がりでかなりじめっとしていたのに、蚊がいなかったのには驚いた。流れるせせらぎのせいだろうかと思った。
午後の分科会は藤井さん、福原さんと一緒に「科学者・医学者分科会」に参加。今回のテーマは、生成AI(チャットGPTなど)とエスペラント。泉さんがチャットGPTを実際に操作して、どのように使うかを見せてくれた。質問をすると即座に返答を論理的にAIが返してくるのでびっくり。AIは決まったテーマについて質問すれば、まとまった回答を即座に返してくれるようだ。和文のエスペラント訳もエスペラント文の添削もうまくしてくれるそうだ。AIのエスペラントの発音はまだ下手なので、会話練習には使えないそうだ。泉さんは、「AIの出すエスペラントの答えが正しいと判断するのはエスペラントをよく知っている人間だから、人間がしっかりしていれば、有効に利用できるのではないか」というようなことをおっしゃっていた。それは私も同感。でも、AIにのめり込んでしまって、人間同士のかかわりを軽視していくと心のぬくもりが伝わらず、相手を思いやることがきず、「共生」を考えられない人間が増えてしまうかもしれないと、少し怖くなった。群馬から来られた方にポケトークというものを初めて見せてもらった。スマホぐらいの大きさで首からかけて使えば、旅行に行っても便利で、いろんな言語に対応しているから困らないそうだ。
午後3時から開会式に参加。大会実行委員長、関西連盟会長、日本エスペラント協会理事長、九州代表、中四国代表、名古屋代表、外国からの参加者の挨拶があった。その後でKLEG 賞が、39年間市民文化祭ふれあい講演会を開催してきた吹田エスペラント会に授与された。私が代表して賞と図書券を受け取り、お礼を述べた。
Gaja Vesperoに参加。森信秀さんのサクソフォン演奏、𠮷井さんと小野さんの二重唱を楽しんだ。西本祐子さんと櫻井武司さんの絵本『つつまれて』の朗読とディジュリドウの演奏にちょっとびっくり。 “Envolvita”という唯一の言葉がいろんな響きで語られて、聴衆を不思議な雰囲気の世界に導いていく。白アリが食べて空洞にしたユーカリの枝の楽器、ディジュリドウの不思議な音と響き合ってさらに不思議な雰囲気に包まれる。ヨガの瞑想に似ているところがあるように思えた。成田和子さんの日本舞踊『雪の浜町河岸』と野田淳子さんの歌 “La vojo”に感動。ザメンホフの詩の次の部分が心に残った。
Nur rekte, kuragxe kaj ne flankigxante
Ni iru la vojon celitan!
Ecx guto malgranda, konstante frapante,
Traboras la monton granitan.
L’espero, l’obstino kaj la pacienco,-
Jen estas la signoj, per kies potenco
Ni pasxo post pasxo, post longa laboro, Atingos la celon en gloro.
最後は島谷剛さんと岩田好兼さんの新作狂言『平泉』。秀衡と義経の毒を飲ませ合うやり取りが絶妙だった。
二日目は相川節子さんの作文教室の後半から参加。再起代名詞のsi の使い方をわかりやすく教えていただいた。11時からシンガポール出身で高知在住のエミーニョさんの講演を聴く。エスペラントを学んで3年というが明快な発音にびっくり。都市国家シンガポールは京都府よりも少し狭い国土で約600万人弱が住んでいて、教育熱心で生活水準も高いようだ。中華系、マレー系、インド系で構成されている多民族国家で、公用語は英語、マレー語、中国語、タミル語。エミーニョさんは趣味の読書、卓球、社交ダンスや三味線、エスペラントで、毎日忙しく楽しく暮らしているそうだ。ちなみに旦那さんは三味線で知り合ったお師匠さんだそうだ。
シンガポールは、街をきれいにするための厳しい法律があり、ガムやアメは禁止、麻薬はだめ、夜間(23:30~7:00)はアルコール禁止だが、日本から近いし安全だからぜひ、シンガポールへ旅行に行ってくださいと結ばれた。
午後1時25分から一般公開番組があり、私は司会をした。前半は、あおい苑のミュージックベルの演奏と野田淳子さんのコンサート。福祉法人あおい苑はさまざまな障がいを持つ18歳以上の人たちが通う作業所で、ミュージックベルの演奏を通して、共演の楽しさや音楽表現の楽しさを日々体験されているそうだ。メドレーで9曲も演奏してくれた。毎日、かなり練習を積まれたことだろうと思う。野田淳子さんの澄んだ透き通るような歌声に、また、心が癒された。「青い空」「シューベルトの子守歌」「アメージンググレース(尾藤さんの尺八と共演)」を歌ってくださった。最後は会場の人と一緒に “Esperanto estas la lingvo por ni” を合唱。
尾藤廣喜さんの講演が始まった。テーマは「世界と日本の貧困問題」。
今、全世界の約1割の人が貧困に苦しんでいる。貧困の原因は三つある。

①政治・経済、
②紛争・難民、③災害・地球環境だ。日本における貧困の現状は、先進諸国の中では低く、韓国よりも悪い。平均所得よりかなり低い所得で暮らす層―「相対的貧困」の割合が高い。なぜか?経済と政治に問題がある。社会保障が不十分。税金も所得の少ない人から多く取って所得の多い人から少ししか取らない。ホームレスと一緒に家族連れが食料配付の列に並ぶという状況もある。コロナ貸付金を返せない人が3割もいる。労働者の賃金は上がらず、物価が上がる。そうした中、生活保護の利用を拒否されたために餓死や凍死や自死をしたという悲惨な例もあった。あらゆる形の貧困を終わらせるためには ①世界の援助国・NGO による援助の充実 ②寄付・募金 ③紛争や戦争を防ぐために「対話」や「相互理解」を深める④地球環境の保全に努力する ⑤日本の貧困問題に対しては、憲法25条の生存権の意味を考え、生活保護制度の充実だけでなく、社会保障全体の充実が重要。「共生こそ平和の基盤」であり、「共生こそ生存の基盤」であると。
私は、現実の実態の重さに圧倒されてしまった。政府はもっと貧困にあえいでいる人々に援助をすべきだと思う。自分の毎日の生活に振り回されて他人に目を向けられないのが、私たち大半の現状だと思うが、隣人にあいさつをしたり、立ち話をちょっとでもしてみてはどうかと思う。ちょっとした言葉かけの積み重ねが人と人との心の交流になっていくと思う。
それが「共生」の第一歩かもしれない。
質疑応答の後大師範の腕前の尺八で『寒月』を演奏してくださった。時間がなくて一部分の演奏で残念だったが、澄んだ美しい音色に凍てつく月の冷たい光を感じ、感動した。
最後は閉会式。KLEGの大会旗が京都エスペラント会から次回開催担当の富田林と堺エスペラント会に渡された。

★ 例会学習より
<昔からよく言われる表現から>
1) 江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ
・Jedano tuje foruzas monon kiun ili gajnis kompense de siaj laboroj.
・Oni diras, ke jedano elspezas monon perlaborintan dum tiu tago por fieri pri sia malavareco.
・Oni diras, ke jedano ne sxparas monon kaj malavare konsumas monon.
・Ne sama la vento blovas konstante(Z)

2) その手は桑名の焼き蛤
・Ne auxskultu tian dolcxajn vortojn.
・Sxi ne estis artifikita de lerta parolo de vendanto.

3) 負うた子に教えられて浅瀬を渡る
・Novico donas konsilon al veterano.
・Junulo aux senspertulo ofte instruas maljunulon aux apertulon.
・Maljunuloj ofte lernas de genepinoj manipulon pri sagxtelefono.
・Antaux longa tempo en la mezlernejo mia amiko faris bruon kaj forestis de la angla klaso. Instruisto kolerigxis kaj ekskribis malfacilajn vortojn sur
la nigra tabulo kaj ordonis lin traduki ilin. Mia amiko diris, ke estas
eraroj en tiuj cxi vortoj.

4) 待てば海路の日和あり
・Se nun nenio iras bone, atendu pacience. Atendo invitos la sxancon.
・Kvieto alvenas post tempest.
・Ne cxiam dauxras malbona vetero.(Z)

5)稼ぐに追いつく貧乏なし
・Se vi sincere kaj diligente laboras, vi ne malricxigxas.
・Ne ekzistas malricxeco, kiu atingas al salajlo. Tamen reale ne ekzistas salajlo, kiu atingas al varprezo.

厳しい暑さがやってきます。熱中症にならないように、クーラーを
かけて水分をこまめに摂取しましょう!